マナーモードにしていたから気づかなかったのだ。
あっくんからの着信が一件もないということは、あっくんも私と同じことを悟ったということ。
そう結論づけていいに違いない。
部長へ折り返そうか躊躇っているそばから、それが着信を知らせて鳴り出した。
ディスプレイに浮かんだ名前に、鼓動が速まる。
応答をタップすると、『やっと出てくれたか』と大きな溜息と一緒に、部長の声が聞こえて来た。
『夕べから何度か掛けてたんだけど』
「……ごめんなさい」
『何かあった?』
声の調子で気づかれたのかもしれない。
優しく問い掛けられて、涙が溢れて来る。
『二葉?』
会いたさは、声を聞いてさらに大きくなっていく。
部長に会いたい。
身勝手なのは分かってる。
部長に会う資格がないことも。
でも、会いたい……。
『今、どこにいる? 家?』