もつれるようにしてベッドに倒れ込む。
首筋に落とされるあっくんの口づけで、そんな痛みを忘れようとするけれど、それ以上に大きくなりつつある別の感情。

あっくんを大好きだった。
あっくんに抱かれたかった。

願いが叶ったはずだったのに、どうしてこんなに苦しいの?
どうして部長の顔ばかりが浮かぶの?

どういうわけか過去形に変わっていく、あっくんへの想い。

あれほど欲しかったくせに。
望んでいた通りになったくせに。


「あっくん……ごめん、待って……」


これ以上へは、とても進めない。
私の言葉に、あっくんは悲しそうな目を向けた。


「ごめん……どうかしてたよな」


私の気持ちに応えるように、あっくんが優しく髪を撫でる。
ついさっき見せた“男”のものじゃなく、“兄”の眼差しが静かに注がれた。

手を引いて私をベッドから起き上がらせると、ふたり並んで膝を抱える。
訪れたのは、言いようのない虚しさと、抱えきれないほどの罪悪感だった。

チラつく両親の顔。
何よりも、部長のことを想うと、胸が押し潰されそうになった。

きっと、あっくんも私と同じようなことを感じているに違いない。
兄と妹は、血の繋がりがなくても、兄と妹でしかない。

ベッドから下り、身支度を整える。
ドアに手を掛けると、「どこへ行く気だ?」と、あっくんが私の背中に問い掛ける。


「……帰るね」

「帰るって……ひとりでここからどうやって……」

「大丈夫。何とでもなるから。……少しひとりになりたいの」


そう告げると、あっくんもそれ以上は何も言って来なかった。