めんどくさいなぁー。
寝かせてよ。
「夏稀!琉斗の入学式でて!!」
ん? 今とんでもない事が聞こえたような…
「はい?」
その場に立ち止まり、聞き返す。
まさか…ねぇ
「だから、琉斗の入学式出て。
お母さんの代わりに」
「いや無理ですよ、
今すぐ、お母さんみたいに家事できたりしませんから…無茶言わないでくださいよ…
私…お母さん死んだら、なんにも食えないよ!!」
改めて、ご飯を食べさせてもらってる有り難みを感じる。
涙目になってる私を見て
お母さんは、呆れた みたいな顔する。
「あんたバカか。
どうしても、会社に出ないと行けないの!
だから、出てやって!」
お母さん、先にそれを言おうか…
「ねっ?」
「え、普通に嫌なんだけど」
「ん〜じゃ、今日はデザート有の外食に連れて行ってあげるから!!」
「マジすか!!行きます!!」
あっ…
飯に負けた。
なんか、すっごい悔しい!!!
「琉斗」
「お、ねぇーちゃん」
お、が一言余計だぞ。
「準備できたんですか」
「できました」
完全にできてないじゃん…
弟の制服は、ブラザーでネクタイが社会人が付けるような…なんていうの?
いちいち巻かないといけない、ネクタイなの!!
「ネクタイは?」
ニヤニヤしながら聞くと
顔を真っ赤にして、怒り始める琉斗。
「しょーがねぇーだろ!!つけれないんだから!!」
誰も、バカにしてないのに…
「はいはい、すいませんでした!
どれ、優しい優しいお姉様が付けて差し上げますよ」
と言うと
「ねぇーちゃんなんて、優しくねぇーよ!」
と涙目で言われる。
おっと、入学だというのに、私は弟を泣かせようとしているではないか!!(全く反省してねぇーなこいつ)
「ごめんって!」
拗ねるとめんどくさいのが、これまためんどくさい。
「俺が帰ってくるまで、絶対話さないから!」
「あ、ごめん。
入学式、私が行く事になったから」
片手を前に出して鼻で笑う。
「誰かねぇーちゃん殴れ」
姉に向かってその言葉はなんだ!!
と、言いたくなるところだけど
私、準備しなきゃ
「え?どこいくの?」
弟よ、私の格好を見なさい。
部屋着なんですよ
髪は…まぁ、全然大丈夫だけど…
「え?着替えるだけだけど?」
「ちっ」
君は今、反抗期なんですか!!?
ネクタイなんて、自分でつけれるようになりなさい!
私だってそうなんだから!!
夏稀side
「なーつーきー!!早く行きなさい!」
琉斗ともめてると、お母さんのお怒りの言葉が聞こえた。
「はいはーい」
適当に返事をして
高校の服を着る。
スーツとかまだないし。
かと言って、中学の制服着るわけにはいかないし。
生徒かと間違われちゃったら困るしね。
「お母さん、鍵貸して」
「はいはい」
私はよく、物を落としたりなくしたりする事が多いから、家ではお母さんに管理してもらってる。
「あんた、その服似合うね」
「でっしょー!」
自分でも、思ったくらいだもん!!
「行くよー、琉斗」
「おう」
あ、ネクタイ出来てる。
お母さんに、やってもらったなぁー?
「友達に教わってこいよ」
私がそういうと
「へいへい」
素直に受け止めた。
認めたなぁ!!
なんて、心の中で思う。
「行ってきます」
琉斗と一緒に登校なんて、久しぶりだ
んーと、小学生以来かな。
「中学の勉強ってむずいの?」
「むずいっちゃむずいね。
だけど、頑張らないと行きたい高校行けないから、努力する価値はあるよ」
あ、我ながらいい事言った気がする。
「ちぇーっ」
私も最初、そうだったなぁ…
「でもいいじゃん!
育児教育だか分からないけどさぁ!
なんか簡単になってるぽいし?
ほんと何なのって!変わってないわよ!
この世は、どうかしてるわよ!!」
なぜか、怒りが爆発した。
じゃあ、あの世ならいいのか?
と突っ込みを入れて欲しかった…
そして後ろから
「ぶっ!!」
吐き出すように笑う人が、後ろにいた
後ろを振り向くと
私の顔が一気に不機嫌な顔になる。
「あんた、なんでいんの?」
嫌味ぽく言うと
「お前に関係ねぇーじゃん」
とそっぽ向いて言う。
ムカッ…
こいつといると、常にムカついてる気がする。
「高校の制服じゃん」
「しゃーない。スーツと言うものがないんだから
藤田だって制服じゃん…ってスーツだし」
「父さんの」
あぁ、お父さん…なんだっけ…
えっと…サラリーマンだっけ?
「あ、琉斗。
そこ右曲がったら、すぐだからもう行きな」
藤田との話を、勝手にぶち切って琉斗に道案内をした。
「なに、お前入学式出るの?」
「そうなんですよ!
お母さんのお代わりになって差し上げたの!!」
ここでまた、怒りが爆発する。
藤田は、爆笑してる
「そんな、笑わなくても…」
急に恥ずかしくなって、うつむく。
バカだな、わたし。
「藤田も?」
「おう、妹のな」
え、藤田って妹いたの!?
知らなかった…
しかも、琉斗と同い年!?
「誰?」
「藤田 莉希」
いや、急に名前言われても…
「しっかし、俺達もう高校生か」
「おい、急に話をそらすな」
「お前、どこ高だっけ?」
無視かよ。
「柏木高校」
「俺と一緒かよ」
お前と一緒にしたくてしたんじゃねーよ!
「ま、よろしくな!」
あ、笑った。
こいつ笑うとこ、あんまり見たことないな。
「そういえば、お前の弟と莉希 後ろと前だぞ」
体育館の壁に寄りかかって見てる私達。
椅子の数が足りなかったらしく、藤田が勝手に親御さんに席を譲っていた。
怒ることではないけど、私の許可もなく…
なんて心の中で思う。
背伸びをして、その光景を見たかったけど
あいにく、私は背が小さくて見れなかった。
藤田とは、結構差がある。
「チビだから見れねーか」
「うるせー!でか!!」
私からしたら、お前は巨人だぞ!!
50メートルの壁を超えてみろ!!
「俺、巨人じゃないから」
まるで私の思ってる事を分かったかのように、呟く藤田。
お前は、エスパーか!
「俺、エスパーでもねぇーし」
さ、さっきから…すごいなこいつ…
地球外生物かぁ!?
「宇宙人違うし」
「怖いぞ…」
なんで通じるんだ!?
「声に出てる。
しかも、声大きい。来い」
と言われ、手を思いっきり引っ張られる、
体育館の外に連れてかれ、頭を1発殴られる。
まぁ、軽くだけど。
「痛くないけど、痛い」
「どっちなんだよ」
呆れた顔をして、私を睨みつけてくる。
「お前、周り気にしたことねぇだろ」
くすくす笑いながら、私に聞いてくる。
私達は今、コンビニから帰ってくる途中。
制服だから、学校の帰りかと思われますが、そうではないんです。
しかも、明日からなんです。
おまけに、藤田はスーツだから
若いお父さんかと、思われている人もいるかもしれませんが、違うんです。
お友達なんです。しかも、高校生なんです。
「アメリカンドッグ、うまい!!」
「やっぱ、そこはホットドッグだろ」
なぜか、“ドッグ” で争う私達。
「藤田は、分かってないなぁ!
これまた、ケチャップとマスタードの相性もいいんですよ!!」
「おい、だったらこっちもあるだろーがよ」
「えっ」
あ、そうだった。
「んでも、あもりんほほっどっぐは、はぁ…」
熱くてまともにしゃべれない、私を見て藤田は爆笑してる。
「は?なんて?」
ふざけたように、聞き返す藤田の顔にむかつく私。