私って…ほんとバカだよね。
助けに行って
無事で帰ってくるなんてほとんどないのに。
気付いてる。
リーダーの女子の後ろの女子達は
きっと私にいじめてくる。
私も、いじめられるんだ。
高校で楽しい事なんて
ないって分かってた。
分かってたけど
どうしても、自分を見つけたかった。
あーあ
遥が無事なのはいいけど
私もひとりで抱え込むのかなー
あんなに、意地張ってたのに
いまさら、弱くなってどうすんの。
ついにその時。
放課後が来た。
下駄箱を開けると、当然出てくる画鋲ちゃん。
やぁ。
これから、よろしく。
にしても、大量だな。
上靴持って帰ろ。
「おい」
聞き覚えのある、声が上から聞こえる。
その瞬間。
少し、私の気持ちが揺らいだ。
「あ、藤田。どした?今帰り?」
「どした?じゃねぇよ。
それどうしたんだよ」
どーもこーも。
画鋲ちゃんのお出ましですよ?
しばらくすると
「あ、いたいた!
笠原さん!これお願いしたいんだけど」
突然、知らない女子に頼まれる。
なんとなく、読めてた。
たぶん。
これから私が向かう、教室には不良か変態がいるはず。
用があるから、先帰ってていいよと言うのを見たら、たぶん悪魔の登場だろう。
「俺も付いていこうか?」
藤田くん。
ごめんね。
本当はそうしてもらいたいんだけど
そこにいる女子の目線と
なにより、そんなこと言える私の勇気はない。
助けを求めるなど、私になんかできるわけない。
だから、あえてこの方法だろう。
「いいよ、先帰ってて」
「おう」
あーあ。
私…バカなの?
バカですね。はい。
「これ、会議室で」
うっお
口元笑ってるよ、君。
怖い怖い。
「はい」
まぁ、あと付いてくるんだろうけどね
「あ、誰だか知らないけど。
付いてこなくていいよ、私そこまで、方向音痴じゃないし」
「え、あ…、うん」
一瞬焦った!
動揺だな?
夏稀side
ガラガラッ
「うわ!マジできたよ!」
やっぱり。
当然のようにいたよ。
不良くんたち。
「名前はぁ?」
変な目で誘うんじゃねぇ。
「笠原夏稀」
「夏稀ちゃーん」
きもっ!
気安く触るなし!!
「ていうか、超可愛くない?」
あら、そうですか?
そりゃ、どーも。
「それが何か?」
ほんとそれが何か?だよね、
うん。
って、えっ?!
私何言ってんの?!
うわぁ〜、最悪〜!
「あー、俺こういう気強い女超好き」
「私、資料置きに来ただけなんで」
苦笑いをしながら、後ずさりをする。
その向こうでは、女子の笑い声が聞こえる。
壁を1枚挟んだだけなのに、こんなに怖さって違うんだ。
怖い。
なんて今更。
「脱げよ」
「は?」
急にくるか?
「口答えすんな!早く脱げ!」
「いやいやいや!おかしいでしょ」
なんでこの展開で、脱げ?
お前ら、頭ダイジョーブか?
「お前が脱げねぇなら、俺達が脱がしてやるよ」
「達なんだ。ていうか、頼んでないから」
全くもって、そんな事1ミリも思ってませんし
はい。
「あぁ?」
あぁ?は、こっちのセリフだわ!
何なのこいつら。
一人の男子が、私の胸元に手を触れた瞬間。
ゾクッと鳥肌がたつ。
こわい
誰か助けて。
「なんだよ、怖がってんじゃねぇか」
「っ…」
ボタンが…外れてく。
ダメだ。
最悪。
こわい。
あーあ。
ぞくぞくする。
すごく、怖い。
やだ。
やめて。
助けて。
なんて、叶わない。
ガラッー
「笠原っ!」
私が諦めかけた瞬間。
会議室のドアが、勢いよく開く。
それと同時に、息を切らした藤田が私の名前を呼ぶ。
「ちっ、誰だよあいつ」
藤田だよ。
なんて言う、隙もない。
腰が抜けて、立てないし
震えてて、声も出ない。
正直、すごく怖かった。
行く前も。
行った後も。
今も。
でも、助けてなんて言えないし。
自分で、どうにかするしかなかった。
何にもできないのに。
できないのに、なんとかしようとしてた。
「てめぇら、こいつになにした?」
睨みながら、私の背中をさすってくれる。
こういうところは、全然変んないんだよね。
「な、なんにも…して…」
えっ
なんにもしたでしょ…
「あぁ?何つった?」
「し、してま、せん」
しました。
完全に、私の胸元触りました!
「へぇ〜。じゃあさ、なんでこいつ、こんなに震えてんの?」
怖かったから。
「し、知らねぇーよ!」
逆ギレですか!?
「まぁ、そーだよね」
えぇっ、許しちゃうの?
なぜか、藤田に触られてる時は、安心して。
離れていくとそこだけ、ジンジン熱い。
なんで…?
「ご、ごめんなさいっ!」
謝りながら、急いで去ってく変態たち。
お、おい。
一生、許さねぇぞ
まぁ、5年後くらいには、忘れてるけど。
「な、なんで、ここだって分かったの」
これが今、一番聞きたかったこと。
「お前どーせ、キャラ違うから助けてなんて言えなかったんだろ?」
な、なんで分かって…。
やっぱり、藤田はエスパーだ。
「怖いなら怖いってはっきり言え」
「こ、怖くないも、ん」
私はいつまで、意地張るんだか。