しばらくたったけど…
藤田がしゃべらない。
どうしたんだろ…
「てめぇ、ふざけんなよ」
心配した気持ちが一気に晴れた。
こいつなんかに、心配してる場合じゃねぇな。
「はぁ?」
少しムカムカした気持ちで、藤田を睨む。
「っ…あのなっ!!俺様は、怪我なんてしてねぇーからなぁ!!!」
急に叫んだと思ったら、慌てて保健室を出る。
「へっ?」
びっくりして、間抜けな声が出る。
一気に力が抜けて、その場に座り込む。
「なんなの…」
そのうち、笑がこぼれた。
保健室を出ると
目の前に、藤田の背中があった。
痛くて歩けないらしい。
「なにやってんの?」
笑いながら聞くと
ガッと私を睨んでくる。
心配してやったのに。
「べ、別に…痛くてっ歩けない訳じゃ…」
君、答えを自分で言っとるぞ。
「…ふーん」
藤田の横を通り過ぎろうとすると
ギュッ
腕をつかまれる。
ドキン
「おい」
「?」
口調はいつも通りだけど
顔はすごく怖いだろうな。
「手当しろ」
「は…って、わっ!」
なぜか、藤田が倒れ込む。
「藤田?!」
息切れが激しい。
熱…?
おでこに手を当てると
「あつっ」
予想通り、熱だった。
くそ…
私ひとりで運べねぇーよ、
すると、運良く先生が来る。
「どうしたの!?」
「熱がすごくて…私じゃ何にも出来なくて…」
少し、情けない気がした。
藤田は、私の事いつも気遣ってくれるのに…
助けてくれるのに
私、何にもできないんだ。
密かに、そう思って、
胸が苦しかった。
夏稀side
「笠原さん。藤田くんを頼むわね」
「は、はい」
親御さんが来るまで、私が藤田の看病をする事になった。
私が出来ること、これくらいしかないと思って。
「無茶しやがって」
足の次は熱かよ。
そういえば私、人の事でこんなに心配したの…初めて?
ううん
そんなはずない。
たぶん…そんなわけない。
冷えピタ変えてあげようかな。
そう思って、おでこに手を当てた瞬間。
ガッ
手を掴まれて、ベットに引きずり込まれる。
「わぁっ」
「勝手に触ろうとすんな、てめぇ誰だよ」
「笠原です」
そういうと、腕を掴んでいる力が少し緩み
数秒後
「えっ!?わ、ちょ、おまっ!なにやって」
それは、こっちのセリフだよ。
心配かけやがって
「なんだ…元気そーじゃん」
少しほっとする。
って何私は安心してんだ、バカヤロー。
ひとりで焦ってると
「マジで心臓に悪いわ…」
「あ、そんなにびっくりした?
でもね、藤田。
無理はダメだよ、早く寝て」
そう言って、藤田の頭に手を置く。
「っ?!」
びっくりしたように、目を見開いて
俯く藤田。
今なんとなく、藤田が可愛い気がした。
「もうすぐ先生来るし…私そろそろ行くね」
入学式出れなくて、残念だね藤田。
「まぁ、だいぶ落ち着いたら…」
話してる途中、藤田にギュッと抱きしめられる。
「?… 藤田…?」
「あ、わりぃ。
あの…なんだ…、ありがとな」
「へ?」
藤田…が、礼を言った!!
「俺も行くよ」
「ダメだよ!お母さん来るみたいだし!そ、それに、また熱悪化したら困るし…」
先生も戻ってくるしね。
藤田がいなかったら、やばいことになりそうだし。
「ははっ、心配か?」
…心配か?
当たり前だろ!
「何言ってんだ、てめぇは。
心配か?じゃねぇよ!!
心配に決まってんだろ!バカヤロー!」
そう叫んで、保健室から全力ダッシュをする。
夏稀side
「はぁはぁっ
翔平!遥は?」
どこいったアイツ。
彼氏でもある翔平を置いて。
「んー、たぶんね…トイレ?」
「トイレ?」
「女子に呼ばれて…」
女子に呼ばれて、トイレですか
遥さん、あなた危ないですね。
「翔平、お前危ないとか思わなかったわけ?」
「え?なにが?」
あぁもう、
「黙ってここにいろ」
うん。
翔平は、バカだ。
藤田も、バカだ。
「お、おいっ!」
お前に構ってる暇ねぇよ。
教室から、猛ダッシュで廊下を走る。
もちろん、先生を見つければ早歩き。
ありえるなら、3階トイレ?
うーん…
どこだかわかんない!!
迷った末、来た先は
3階の女子トイレ。
予想通り、女子の笑い声が聞こえる。
遥…
「脱げよ!動画とってあげるから!」
「な、なんでっ…」
大変、ほかの生徒に見つかっちゃった。
「あっれぇ…もうすぐ入学式始まるんだけど…なーにやってんのかな…?」
まぁ、私も出るんですがね…。
「はぁ?今こいつ懲らしめてんだよ」
「はぁ?そいつ嫌がってんだけど」
わたし、強くもないのによくこんな事言ってるな…。
自分でも、尊敬するよ。
「お前誰だよ」
「君らがいじめてる女子の友達ですが」
なにか?
みたいな顔をする。
「いじめてねぇよ」
「はっ?これどう見てもいじめだよね?
相手は嫌がってて、お前らそれ知ってんのに面白がってやってるんだろ?」
「お前に何が分かるんだよ!」
何にも分かんねぇよ。
んでも、予想はつくよ。
よく分かる。
その気持ちは。
「翔平と付き合ってんの、羨ましかったんでしょ」
そうしか、思えない。
「ち、違うし。
だ、だいたい!お前も、たらしかよ」
はい?
ってなるよ。
好きな人すらいないんですが?
てか、だいたい男子と仲良くして何が悪いの?
「加藤くんともの…藤田くんとも…仲良すぎなのよ!」
いや、だってさ
中学からの付き合いだし?
それに、私の幼なじみだし?
仲良すぎじゃないと、おかしいですよね⁉