君が私を愛し続けた理由


玄関に行けば、新品のロファーがある。


そこで、高校生なんだと実感させられる。


「いってきます」


玄関を出た途端


「げっ」


藤田にばったり会う。


「おう、お前も今からか」



そういえばこの通り、藤田の通学路だった…


ばったり会っても、おかしくない。


「あれ、フジさんが見えるなぁ」


すこし、とぼけてみる。


藤田のフジ


「こっから見えるわけねぇだろ」


お前のことを言ってるんだよ


気づかねぇーのか


お前の苗字には、

ふじ

が付いてるんだよ!!







そんなおふざけは終わりにして


初日から、テストがあるらしい。


私はそこまで、バカじゃないからできるとは思うけど…


やっぱ、高校生の勉強だからレベルは高いよね…


「テストあるんだって。
勉強してきた?」


ニヤニヤしながら聞くと

「はっ?んなの知ってるし」


いや…私は、勉強してきた?って聞いたんだけど。


知ってたなんて誰ひとりとして、聞いてないけど⁉


こいつのバカさに、結構びっくりさせられる。


「遥、学校着いたらしいな」


「うっそ、はや!!」


そういえば、言ってたな


「行こっ!走ろ!!」


遥に会いたくて、足を急がせる。

こいつを置いてったら、怒るだろうから一緒に行くハメになるけど…


「はっ?!走んの?」


「うん!早く遥に会いたい!」


そういうと

「わかった」


私が手を引っ張りながら、走る。


全力猛ダッシュだ!!


「早くね?」


「うんー!」




やっぱり、地元の高校じゃないから


遠いいのは分かってたけど…


でも、私は歩きが良かった。

気が変わったら、自転車になるだろうけど…


「腹いてぇ」


「ごめんごめん、走りすぎた…」


運動神経が結構いい、藤田でも疲れてる距離だ。


クラス表を見て


そのクラスに飛び込む。


見事、仲良し4人組はみんな同じクラスだった。


これで、渡しやすくなったけど…


そう気にしてると、遥が私のもとに飛び込んでくる


「わっ?!」


その重さに、バランスを崩してしまい、後ろにいた藤田に倒れ込む。


「…っ?!」


藤田は、私と遥ふたりとも受け止めてくれたけど、足をくねってしまった。


「ごめん!藤田!」


今日、これで何回目だろうか


「いいって、それよりお前は怪我ねぇか?」


私より自分の事気にすればいいのに。


夏稀side



今は、業間休み


「りくー!起きろよっ!」


「翔平、藤田にそれは聞かないと思う」


翔平というのは、


藤田と一番よく一緒にいる友達の


加藤 翔平-Syuhe Katou-


こいつは、遥の彼氏。

私の幼なじみでもある。


今まで、ほぼ一緒。


私の隣は、藤田になった。


遥の前は、翔平だけど。


それで、今朝私に飛び込んできたらしい。











さっきから、気になってることがある。


さっき、足をくじってから一向にしゃべらない藤田。


あの二人がいなくなると


ブツブツ文句を言い始める。


「桐山のせいで足くじったじゃねぇかよ

マジ、リア充爆発しろ」


怖いこと言ってるなぁ…


「藤田」


私が急に呼ぶと


不機嫌そうに顔をこちらに向ける。


「あぁ?」


その返事の仕方が怖い。

「ちょっと、ついてきて欲しいところあるんだけど」


この際、可愛そうだからあのふたりから離してあげよう。


しかも、手当してないしね。


ちょこっと、保健室に…


「来て」


足を引きずりながら歩く藤田は

顔も引きずっていた。


相当、痛いんだろうな…




「ここ」


「は?保健室じゃねぇかよ」


「うん、手当しようかなぁって」


まぁ、私がやるとすごく雑になって、下手になるからもちろん、先生だけどね


先生がいる事を期待して、ドアを開ける。


「失礼します」



先生は…


いませんでした。


どうしようかな


「んー、私できないしなぁ…

かと言って、怪我してる人にやらせるのもなぁ」


とか言ってると


「雑でもいいけど?」


なんて言ってる、藤田がいる。


お前どんだけ、上から目線なんだよ


雑でいいからやれ。と…?


「笑わないでね」


絶対笑いそう。


『お前、超下手くそじゃん!』


とか絶対言うよね!!



だって、あの藤田だもん!



「んな事、分かってるよ」


ぜってぇ、分かってねぇな!!



文句を言いながら、テーピングとやらを出す。


何種類かあったけど、面倒くさいから適当に決めた。


「間違うからね」


それは自覚してるのですよ。


「嫌ならやんきゃいーじゃん」


次から次へと文句を言いやがって。


「あっそ、せっかく私がやってあげようと思ったのに」


頬を膨らませてそっぽ向く。


藤田は1度

私のこれに負けたことがある。


そのときは、

最高にいい気分だった。



しばらくたったけど…


藤田がしゃべらない。


どうしたんだろ…


「てめぇ、ふざけんなよ」


心配した気持ちが一気に晴れた。


こいつなんかに、心配してる場合じゃねぇな。


「はぁ?」


少しムカムカした気持ちで、藤田を睨む。


「っ…あのなっ!!俺様は、怪我なんてしてねぇーからなぁ!!!」


急に叫んだと思ったら、慌てて保健室を出る。


「へっ?」


びっくりして、間抜けな声が出る。


一気に力が抜けて、その場に座り込む。


「なんなの…」




そのうち、笑がこぼれた。



保健室を出ると


目の前に、藤田の背中があった。


痛くて歩けないらしい。


「なにやってんの?」


笑いながら聞くと


ガッと私を睨んでくる。


心配してやったのに。


「べ、別に…痛くてっ歩けない訳じゃ…」


君、答えを自分で言っとるぞ。


「…ふーん」


藤田の横を通り過ぎろうとすると


ギュッ


腕をつかまれる。


ドキン



「おい」


「?」


口調はいつも通りだけど

顔はすごく怖いだろうな。


「手当しろ」


「は…って、わっ!」


なぜか、藤田が倒れ込む。


「藤田?!」


息切れが激しい。