君が私を愛し続けた理由



うーん、しかしなぁ…


この服のお金を…どう返そうか…


明日…クラス表見て決めよう。



同じクラスだったら、渡しやすいけど


同じクラス……飽きたな。


「笠原」


後ろから、誰かが呼ぶ。


その声は聞き覚えのある声だった。


振り返ると、なぜか真っ赤な顔をした、藤田がいた。


「ん?」


「ん?じゃねぇよ。ん?じゃ…

何ひとりで帰ろうとしてんだよ」


え、だって日本語テキに、


『お前、もう帰れ!!』


いわゆる、さっさと帰れだからひとりだよね!?


琉斗は、勉強するみたいだし…




こいつ、日本語大丈夫か?


「っ…その…なんだ。

送ってあげてもいいけど…」


……はい?


なぜそんな、上から目線なんだ。ちみは!



いやっ、別に寂しくないんで…


この明るさだったら、ひとりで帰れますけども!!


「……藤田の好きに…」


「…いくぞ」


行くぞ?


どこへやら…


まぁ、私の家でしょーけど




「おい、カタコトうるさい」



「耳塞げ、耳を!!」


ヒールなんて履いてたら、そりゃあ

カタコト なんて当然なりますよ!

しかも、ヒールの丈が短いなら分かるけど


高いからね!!これ

私とっくに、コケてるよ!!


「塞いだら、お前の声聞こえねぇもん」


ドクンッ


どこか、胸の奥で何かがなった気がした。


気のせいだよね


「藤田が選んだよ、この靴」


「似合ってっけど…うるせぇな」


誰かこいつ、黙らせてくれ。


カタコト カタコト うるさいって、

お前が逆にうるせぇよ!!

ってなるね。




「そういえばさ、藤田ってモテるのに、なんで彼女作らないの?」


ずっと気になってたこと。


ほぼ、毎日のように告白されていた。


「……なんか作る気にならないって言うか…」


ん?なんか藤田の様子がおかしいぞ…


棒読みっていうか…


「好きな人いないの?」


「…っ…そ、そういうお前はどうなんだよ!」


「私?いないけど…」


いないけど…


いないけど…


なんかモヤモヤするな…


「ほ、ほら、お前の家に着いたぞ」


そんなこんなしていると、あっという間に着いちゃうんだね。


「送ってくれて、ありがとうございました」


ここは、ちゃんとお礼をね。


「へいへい…

…明日…っ…寝坊すんなよ!!」


急に怒鳴られて、びっくりする。


「ははっ、そのままそっくり返すよ

じゃーね!」


「おう、明日な」



なぜか、頬が熱かった。


友達、できるかな…


っていうか、友達いるね。



夏稀side


朝5時。


目覚まし時計の音も聞かずに、ムクっと起きる。


「あ、まだ5時だ」


寝ようか迷ったけど、やっぱり起きる事に決めた私。


鏡の前に立って、制服を整える。


高校は、女子も男子もネクタイみたいだ。


私がこれから通う、柏木高校は

地元の中学生は、あまり受験はしないらしい。


だから、受けたのは


私と藤田と藤田の友達と私の友達ぐらいだろうか。



「来年、廃校かもな」


ひとりで言って、ひとりでくすっと笑う。


笑顔テストだ。


怖いけどね…


下に降りて、朝ごはんの準備をする。


お母さんも、今日から仕事みたいだ。

「おはよ」


「あら、今日は早いのね、

朝ごはん、何がいい?」


今日はって何よ、

昨日も誰かさんのせいで、起きちゃったのよ、



心の中で言い訳を言う。


「パンでいい」


あまり、スカートとか履かない私は、高校の制服に慣れない。


昨日は、トレンカを合わせたけど


さすがに、学校にはムリだろと思い、紺色の靴下にした。


私の前に出された、パンを頬張る。


「おいし」


イチゴジャムパンだ。








ご飯を食べ終わって、歯を磨く。


顔も洗い、髪を整え


もう一回、制服を整える。


「よし」


あとは、荷物。


そういえば、藤田返したいものあるんだよね…


どういう物だろう。


ていうか私、何のカバンで行こうとしてるんだ?


あ、指定カバンだっけ?



気になって、友達に連絡をする



桐山 遥-Haruka Kiriyama-


小学からの付き合いで、お互いの事は全部知ってる、私にとって最高の親友。



おはよー

今日の鞄って、遥は何にする?>




携帯から手を離すと、着信音が鳴る。


返事返すの早いな。



<私はね…スクバだよー

私もう、家出たwwww



スクバ…か…


うちにあるかな…



こんな朝早くに出ることに、なにが面白いのかよく分からなかった、





クローゼットをあさると、当然出てくるスクールバック。


今日は…5時間だから弁当いるね。


教科書、ノートを詰め、


お弁当が入るスペースを作る。


携帯をポケットに入れて


財布をスクバに入れる。


「お母さん、弁当」


「はい、どーぞ」


お母さんも、すっかりスーツ姿。


琉斗は、元気よく玄関を出てった。


お父さんは、出張だからいない。


これから、私も始まるんだ。


スタートラインにたった気がした、


玄関に行けば、新品のロファーがある。


そこで、高校生なんだと実感させられる。


「いってきます」


玄関を出た途端


「げっ」


藤田にばったり会う。


「おう、お前も今からか」



そういえばこの通り、藤田の通学路だった…


ばったり会っても、おかしくない。


「あれ、フジさんが見えるなぁ」


すこし、とぼけてみる。


藤田のフジ


「こっから見えるわけねぇだろ」


お前のことを言ってるんだよ


気づかねぇーのか


お前の苗字には、

ふじ

が付いてるんだよ!!







そんなおふざけは終わりにして


初日から、テストがあるらしい。


私はそこまで、バカじゃないからできるとは思うけど…


やっぱ、高校生の勉強だからレベルは高いよね…


「テストあるんだって。
勉強してきた?」


ニヤニヤしながら聞くと

「はっ?んなの知ってるし」


いや…私は、勉強してきた?って聞いたんだけど。


知ってたなんて誰ひとりとして、聞いてないけど⁉


こいつのバカさに、結構びっくりさせられる。


「遥、学校着いたらしいな」


「うっそ、はや!!」


そういえば、言ってたな


「行こっ!走ろ!!」


遥に会いたくて、足を急がせる。

こいつを置いてったら、怒るだろうから一緒に行くハメになるけど…


「はっ?!走んの?」


「うん!早く遥に会いたい!」


そういうと

「わかった」


私が手を引っ張りながら、走る。


全力猛ダッシュだ!!


「早くね?」


「うんー!」




やっぱり、地元の高校じゃないから


遠いいのは分かってたけど…


でも、私は歩きが良かった。

気が変わったら、自転車になるだろうけど…


「腹いてぇ」


「ごめんごめん、走りすぎた…」


運動神経が結構いい、藤田でも疲れてる距離だ。


クラス表を見て


そのクラスに飛び込む。


見事、仲良し4人組はみんな同じクラスだった。


これで、渡しやすくなったけど…


そう気にしてると、遥が私のもとに飛び込んでくる


「わっ?!」


その重さに、バランスを崩してしまい、後ろにいた藤田に倒れ込む。


「…っ?!」


藤田は、私と遥ふたりとも受け止めてくれたけど、足をくねってしまった。


「ごめん!藤田!」


今日、これで何回目だろうか


「いいって、それよりお前は怪我ねぇか?」


私より自分の事気にすればいいのに。