「なんでか聞いてもいいか?」

「聞きたいなら聞いてくれても構わない」

「うん。聞きたい。教えて」


別に平気。
もう大丈夫。

「父親は私が3歳の時に病気で
死んだって母から聞いてる。
中学2年の時までは、この父親が残してくれた家で
母と一緒に住んでた。

だけど、
ある日突然、母がいなくなった。

近くのスーパーとか、
仲のいいおばさんや
職場や…あちこち探したけどいなくて、
事故にあったんじゃないかって心配して、
警察にも行ったけど、
見つからなくて…

1週間経ってから、
捜索願を出そうとした時、
家に母が帰ってきた。男と一緒に。

まだ私が未成年だから、
戸籍は抜けないけど、
成人になったら、抜いて欲しいとも言われた。



それからはここで1人で住んでる」


「…なんで戸籍まで」

「男が資産家らしい。
戸籍上私がいると問題があるんだと思う。
お金持ちの男だったから、
この家も使わせてもらえてるし、
十分にお金も入れてくれてる。



最初は、私よりも男を選んだ母を
恨んだこともあったけど、
ここまで育ててくれた。それに、
全てを見捨てられたわけじゃない私は
まだ幸せなんだって思えてる。

だから…」