「なんでか聞いてもいいか?」
「聞きたいなら聞いてくれても構わない」
「うん。聞きたい。教えて」
…
別に平気。
もう大丈夫。
「父親は私が3歳の時に病気で
死んだって母から聞いてる。
中学2年の時までは、この父親が残してくれた家で
母と一緒に住んでた。
だけど、
ある日突然、母がいなくなった。
近くのスーパーとか、
仲のいいおばさんや
職場や…あちこち探したけどいなくて、
事故にあったんじゃないかって心配して、
警察にも行ったけど、
見つからなくて…
1週間経ってから、
捜索願を出そうとした時、
家に母が帰ってきた。男と一緒に。
まだ私が未成年だから、
戸籍は抜けないけど、
成人になったら、抜いて欲しいとも言われた。
…
それからはここで1人で住んでる」
「…なんで戸籍まで」
「男が資産家らしい。
戸籍上私がいると問題があるんだと思う。
お金持ちの男だったから、
この家も使わせてもらえてるし、
十分にお金も入れてくれてる。
…
最初は、私よりも男を選んだ母を
恨んだこともあったけど、
ここまで育ててくれた。それに、
全てを見捨てられたわけじゃない私は
まだ幸せなんだって思えてる。
だから…」