やっとこさ仕事も一段落し、わたしはぐぐっと伸びをする。



 時刻は午後五時。


 まだ部活はやっている時間である。


「……終わったけど、行ってもいい?」


 おそるおそる横で、ものすごいスピードでキーボードをたたく時沢に声をかける。


 すると、彼にしては久しく笑顔が返ってきた。


「いいですよ。いつもに比べたら仕事しましたね、先輩。


お疲れ様です。……帰り道、お気をつけて」


 おお……。


 珍しい微笑みに思わずきゅんとしてしまったが、おそるべし時沢勇人。


 こうやってクラスの女の子たちを射止めてきたんだろうな……。


 まあ、わたしには先生という人がいるんだけど。


 まったく、罪な男だ。ビデオとって全校放送してやりたいわ本当に。


 ……いやだめだ、そんなことをしたら必ず返り討ちに会う。


絶対に先生にわたしの本性バラされる。


 それだけは絶対にあってはならない。