わたしは黙ったまま自分のぬりかけの塗り絵を見下ろす。
へたくそに見えるように、わざとぐっしゃぐっしゃに塗った塗り絵である。
もちろん未練などない。くだらん。
……がしかし。
これは一応コンクールの出展作品なんだけどな……。
「人にものを頼むときは、上から目線でもの話すのは論外なのよ、はるみちゃん」
常識である。
「なにかいった?」
……ま、いじめっこ(しかも幼稚園児)に常識を説くのは無理だろうけど。
わたしの言葉は、聞こえないようにぼそりとつぶやいたものだったので、
彼女はよく聞き取れなかったらしい。