風に舞った桜が、ひらひらと落ちていく。
わたしはその様子を眺めながら、ぼうっと後者の前で突っ立っていた。
「美咲」
名前を呼ばれて、思わず振り向く。
そこに立つのは、ずっと…ずっと好きだった…いや、
今も好きな人。
「なーんーなんですか、そのニヤけた笑顔は。性悪教師」
「おーおーおーおー、お前もずいぶんな口きくようになったな、猫かぶり美少女」
いっらあ…。
【十年前】からわかっていたことではあるが、彼はやっぱり口が悪い。
それは、わたしが言えたことじゃないけど。
「……最後までからかうつもりなんですか、まったく…」
わたしは頬を膨らませながら、目の前の人を見上げた。
「バカショーちゃん」
「おいおい、26の男にショーちゃんはないだろ」
先生は…ショーちゃんは、そう言って笑った。
「高等部卒業、おめでとう、美咲」