ぐっ……。


わたしは言葉に詰まり、ぷくっと頬をふくらませた。


やっぱり、彼は『ショーちゃん』であり、『先生』でもあるのかもしれない。


わたしは今でもドキドキしてるし……いっしょにいると、ほっとする。


なんで、気づかなかったんだろう。ショーちゃんは、ずっとそばにいたのに。



「子供、じゃないです……」



違う。気づかなかったんじゃなくて、わたしは忘れていたのだろう。


大切な人の記憶が、すっぽりなくなったようなあの感覚。


あれは、先生を忘れていたからだったのだ。



十年前の『わたし』が一番親しくなる人だから。



先生は笑ってくしゃくしゃとわたしの頭を撫でた。