おれは腹黒は結構ですけど、とさわやかに言って笑う時沢にじゃっかん腹を立てつつも、


わたしは思わず笑みをこぼす。



そっか。わたし、ありのままでも、大丈夫なのかもしれない。



「そして、謝りたいことですが」



時沢はそう言うと、ゆっくり頭を下げた。



「……え?ちょっと、時沢⁉」



いつも尊大で優秀な後輩に頭を下げられて、わたしは戸惑う。


いったい何が起きてるの?


……時沢は頭を下げたまま言う。



「あなたを利用するような真似をして、申し訳なかったです。


また、おれも『時界』の人間達も、先輩の母親が十年前に亡くなっているとは知りませんでした。


つらい過去を思い出させてしまったのなら、おれたちの不手際だ。


すみませんでした」