父はわたしを離すと、にっこりとほほ笑む。
久方ぶりの父の笑顔だ。最近は仏頂面ばかり見ていたから、よほど心配させたのだろう。
「剣道部の後輩たちも、たくさん来てくれたぞ。ちゃんと感謝しておくんだな」
「そうね」
棚にかけられているのは千羽鶴だろうか。
仮面をかぶったわたしを慕ってくれている、と思うと少しだけ複雑だが、心配してくれてたのだと思うと、やはり嬉しい。
「そうそう。生徒会の後輩も今、ちょうど来てくれているんだ。
……おれは出ているから、礼くらい言っておけよ」
「生徒会の後輩?」
嫌な予感がして、病室の戸のところに目をやると。
「目を覚ましてよかったです、白井先輩」
やはり、完璧な後輩スマイルを顔に貼り付けた時沢が立っていた。