しかし、私の言葉には母は、微笑んだまま首をかすかに振った。
「わがままは、だめよ……美咲。
大丈夫……あなたなら……、大好きな人と、ちゃんと幸せに、なれるわ……。
今は、忘れているかも……しれないけれど、思い出して……。
あなたが好きな……人のこと」
「おかあ、さん……?」
……いやだ。どうして。
「幸せになってね…………。あなたの、幸せが……わたしの、幸せ」
ふわり、と笑って。
母の手の力が、完全に抜けた。
「…………え?」
顔から血の気が引いていくのがわかる。
ふと心電図に目をやると、そこにあるのは一直線。
ピッ、ピッ、とリズムを刻んで鳴っていた音も、いつの間にかピー…という音に変わっていた。
そして……目の前には、優しく微笑みながら、目を閉じている母の顔。