今。なんて……?
わたしは悲しみを忘れて母の顔に見入る。父をふと見ると、彼も驚きに眉をひそめていた。
……母は、いたずらが成功した子供のように、無邪気な笑顔で言った。
「ふふ……お母さんね……聞いちゃったのよ……。死ぬ、前だから……。
時の世界の、王様なんて、いるのね……。
彼が、あなたは今……十五歳なのだと、教えて、くれた……。
とってもかっこいい子で……お母さん、びっくりしちゃった……」
「お母さん……」
ここに来る前に、あの尊大な天使長が言っていた、不可思議な固有名詞。
時の世界をつかさどる、『時界の王』。
母は彼から、いったい何を聞いたのだろうか?
「美咲……?」
父が、わたしに不安そうな顔を向ける。