まあ、そんなこんなでわたしたちは平穏な日常を取り戻していた。
……でも、その平穏のせいですっかり忘れていたことがあったのである。
そう、おだやかにテレビを見ていたわたしに、連絡が入ったのだ。
……母の、容態が悪化したと。
「お母さんが……?」
「そうだ!今、とっても危ないんだ!
美咲、お母さんのそばに来てやってくれ!今迎えにいく!
美波ちゃんの家だな?待ってろ!」
父はそう言って、一方的に電話を切った。
「みさきちゃん?どーしたの?」
そういう美波ちゃんの声も、わたしの耳には届かない。
……どうして、忘れていたのだろう。わたしは、最低だ。
今日は……母の、命日じゃないか。