わたしが静かに首を振ると、彼は本気で驚いた顔になった。
「本当に知らないのか……。じゃあ、あのメモは誰が」
「おい、さっきから何をこそこそと話してる」
「!」
いきなり声をかけてきた男を、山内くんはバッと振り返った。
険しい顔。真剣、といったほうが正しいだろうか。
「お前には関係ないだろ」
低い声で言い返す山内くんに、男はにやりと笑う。
「立場を忘れるなよ、クソガキ。お前はただ、話を聞いちまったからそこにいるだけのただの人質だ。
態度次第じゃ、ひどい目に遭うぜ。なんてったって、これにはバックがついているんだからな。
お前は知らないだろうが」
……この誘拐事件に、バック?
そんなことわたし……知らなかった。