「……あの、メモ……?」
「そうだよ。高津さんがギリギリのところで、モールス信号の暗号メモを残してくれたんだろ?
それのおかげで、おれたちはここがわかったんだ」
……ちょっと、待って……。
「メモって……なんの、こと……?」
「はっ?」
ここで初めて、後ろ手を縛られていても、突き飛ばされても、余裕そうな顔をしていた山内くんが動揺を見せた。
しかし、驚いているのはこちらも同じ。
モールス信号の、メモ……?わたしは、そんなものは知らない。
連れ去られる前に、そんなものを書く暇なんてなかった。
「メモって……あの、メモだよ。玄関にあった……」
男に聞かれちゃまずいから、言えないのかと勘違いしたのか、山内くんは声をひそめる。
でも、知らないものは、知らないのだ。