大きく頷くと彼はクスッと微笑み、黒いリュックからカメラを取り出した。




「わ!本格的!写真家かなんか目指してるの?」

カメラがカッコよすぎて思わず聞いてみた。


「いや、ただの趣味。綺麗な景色の写真を撮るのが好きなだけ。」


へー。趣味かあ。とてもいい趣味だな。なんて感心してると…


「これ、今日撮った写真。」


と言ってカメラを私の方に向ける。



カメラの画面にある写真はとても綺麗なものだった。



「これ…!町の展望台からの景色…?」



「さっすが。まあ、地元だからわかるよね」


そりゃあね。この町を愛してますから!

「んで、次。」

画面が切り替わった。



次の写真は海の写真。




キラキラと青く輝く私の町の海。



いつも見ている景色なのに、櫂くんの撮った写真の中だとさらに青く輝いていた。

「実際に見てる海と櫂くんの撮った写真の中の海だと景色がなんか違う…」

あっ!思ったことを口に出してしまった。


櫂くんはニカっと笑った。

「そう?それはありがと。」

「あ、あと、呼び捨てでいいよ。」


呼び捨て…?そんなそんな、今日初めて会ったばかりなのにいいのかな…?


「…ほら、俺、週に2、3回はここに来るし。…また会うかもしれないだろ」


…そっか。


「うん!じゃあ櫂!今日は素敵な時間ありがと!とっても楽しかった。」

私はせめてのお返しにと心を込めてお礼を言った。



櫂はうつむいて少し笑って私の方を見た。


「こちらこそ。俺も楽しかった。」

よかった。また1つこの町のよさを知ってもらえたらいいな。


「あっ!やべっ!もうこんな時間!電車が来る!」

櫂は腕時計を見ながら言った。



「そうなの?!私も駅まで行く!」

なんか、もうちょっとそばにいたかった。だから、お見送りすることにした。



「急ご!」と彼は手を伸ばしてきた。