指一本動かない。

 それはどういうことを意味するのか、ふたりはわかっている。

 実は、男性はこのとき流血はしていなかったのだが、このときのふたりは、そこまで気がまわらなかった。


「し、真一さん・・・!」

「…………」

「た、大変。き、救急車を呼ばなくちゃ!」

「・・・・待て。」

 そう言った真一の唇は、震えていた。