「店を持つことか?」

「そうよ。お互い合意での離婚だから、慰謝料もないし、お金がなかったから、夜の仕事をして、資金を貯めて、やっと」

「そのときから僕たちが出会っていれば、資金を出してあげれたかもしれないな」

「やだ…。虚しくなるじゃない」

 麻里子は、からだを横に傾けたまま、上目遣いで真一を見た。

 さすがの真一も気をそそられる。

「あの店は、私にとって子供みたいなものよ」

 麻里子は、前夫との間に子供はいなかった。