そう。


これが私の日常。



誰からも認められる いい子の橘 春陽。



いい子というのは、いつでも笑顔で優しくて、みんなに求められる姿でいること。



困っている人は放っておけなくて 常に自分の事は顧みずな、そんな人のこと。



...私はある理由があって いい子でいなくてはならなかった。



だから ずっと笑顔で自分を取り繕っている。



最近では、もう本当の笑顔がなんなのかすら分からない。



でもこうして作った笑顔を浮かべておけば クラスメイトは簡単にそれを信じてしまうから、今さら分かろうとも思わないけれど。



それでも 時々ふと ひどい喪失感と虚無感に襲われる。



誰にも本当の自分を見せられない窮屈な思いと、どうしようもないという悲しいほど清々しい諦めが混じり合って、グチャグチャな色になっているのだ。



「ねぇ春陽、聞いてる?」


「ごめんごめん。何?」



むぅっと頬を膨らませるクラスメイトに、私は咄嗟に笑顔を作る。



それがほぼ反射的に出来るようになってしまった事は、あまり喜ばしい事ではないんだろうな。



クラスメイトは、もう。しょうがないなぁ と苦笑して私の頬をツンツンと突ついた。



「今日の体育、男子と合同!って言ってもただ体育館で半面ずつ使うだけだけどね。ちなみにバスケだよ!」



「そうなんだ。まあ雨だしね。」



「そうそう。だから春陽、一緒のチームになろ!春陽がいたら勝てるしねー。」



「ちょ、ずるい!私達だって誘おうとしてたのに!」



ワイワイと盛り上がる彼女達は皆、体育が好きなわけではない。



男子と合同という所に こんなにもテンションが上がっているのだ。



その理由は 同じクラスの王子2人のバスケ姿をしっかりと目に焼き付ける事が出来るから...だと言っていた気がする。



生徒会の役員をしている2人は...というか生徒会の役員全員、かなり整った容姿をしているともっぱらの噂。



1年生に1人と、2年生に2人。あと3年生に1人いる。



みんながみんな違ったタイプのイケメンだから、全校女生徒からそれぞれ人気を博しているらしい。



らしいというのは、実は私は彼らの事をほとんどよく知らないから。



さすがに同じクラスの2人の事は知っているけれど 後の2人は名前も顔もさっぱり分からない。



イケメンだよ!とクラスメイトから散々言われているものの、正直全くと言っていいほど興味が無いのだ。