愛の家庭は普通じゃない。


その家に、温かさは無い。

優しさも家族間の絆も、愛情も無い。


それはきっと、親が本当の親じゃないというのもあるのだろう。


愛は生まれてすぐに、両親に捨てられたと話した。

本当の両親の記憶は、欠片も覚えていないと。

だから別に、さびしくないとも。


だから今の愛の保護者は、あくまで保護者だ。

愛情なんて、与えない。


端から見たら異常だ。


でも愛は、ずっとそこにいた。

そこで育った。

故に、愛情を与えられないのが普通で、傍には誰もいないのも普通になってしまった。


それでも精神に異常があるわけでもなく、いたって健康にここまで育ったのは、祖母のおかげなのだろう。

それも長くは続かなかったが…。

物心ついてすぐ、亡くなったと聞いた。


愛はもとから執着心があまりなかった。

ものにたいしても、ひとにたいしてもそれは変わらなくて…。


きっと、すぐに捨てられると諦めているからか。

それとも捨てられるのが嫌で、執着しないのか。


やっと、特定のものに拘れるようになったとおもったのに…。



「…信じちゃ、ダメなのかな?」

震える声で、愛は言った。


「期待しちゃうから、こんなに悲しいのに…あたしは、また…」

「――愛」


このままじゃダメだ。