「…きっと、トイレに行ってるんだよ」

絞り出すように愛が言う。

本当は、分かってるんだ。

愛はバカだけどバカじゃない。

それでもわずかな希望を口にするのは、絶望を隠すため。

「何分待ってんの」

「……」

「早退したの、五限目なんだよね?
それだと、軽く一時間は待ってたってなるよ~」

「…愛、帰るよ」

「……」


きゅっと、愛が拳を握りしめた。

そうでもしないと、泣いてしまうからだろう。


その姿が弱々しくて、寂しそうで、………。


「…待っててって」


ぽそっと愛が呟いた。


「待っててって、言ってたんだけどなぁ……」

「愛…」

「愛ちゃん…」