平静を装って聞く。
出来るだけ、声に感情を出さないように。
「気になること?」
もしここが家だったら怒鳴っていたと思う。
とても冷静じゃない、いられない。
そういう意味では学校は、ある意味良いストッパーだ。
「…愛ちゃんの隣、やっぱり二島慶太だった」
二島慶太…。
その名前には聞き覚えがあった。
兄が言っていた、最近有望な後輩が入ったって…。
次期総長とも言われてる実力者。
銀狼の幹部。
「昼休み見かけて、まさかとは思ってたんだけど…。
まさか、幹部だったなんて…どうしよう」
「落ち着け、結衣」
今にも泣き出しそうな結衣をさとす。
「…愛は、本当に帰ったのかもしれないじゃん」
可能性はいたって低い。
でも、今はそれにすがるしかない。
結衣を連れて校舎を出た。