リラが、俺を好き?



(そんな、はずない...リラが好きなのは...)



 そうだ、リラが好きなのはシルベスターのはず。



 彼女が自分を好きになるわけがない。






 そう頑なに思い込んでいたグロルは、リラの笑顔を目にして固まる。



「信じてくれるまで何度でも言うわ、私は、グロルさんが好き」



「......!!」



「シルベスターくんよりも、誰よりも好き」



「〜~~っ!」



連呼される愛の囁きに、グロルは顔を真っ赤にさせて悶絶している。



それでもリラはその囁きを止めない。



その様はまるで、今まで勘違いをして避けていたことの腹いせに意地悪をしているようにも見える。



 そう言った類に全く免疫がないグロルは、ただただ受け身になるしかないようで。



 辺りを染める夕日に負けず、真っ赤に染まる顔を必死に隠すグロル



 そんな姿が彼らしくなくて、むしろとっても可愛くて



 リラはまた、ふわりと笑う。



 


「ねえグロルさん、私好きって言いましたよ」



 返事は?



 俯くグロルを下から覗き込み、小首をかしげて尋ねる。



 ウキウキ楽しそうなリラをグロルは恨めしそうに見つめ、



「......分かってるだろう、もう」



「んーー?聞こえなあい」



「.........くそぅ...」




 悔しそうに、そう呟いた。









「............、、だ」




「ん?」




「...す、」




「すー?」





 追い詰められたグロルは覚悟を決める







「......す、好きだ」




 今まで経験したことがない、激しい鼓動



 熱くなる身体



 たった一言が自分を別人のように変えてしまう。






「ファーナーの事が、好きだ」




「...うん、」




「...好き、なんだ」




「うん。私も」







 両想い



 そうなることの喜びを、その時初めて知った。



 体中熱くて苦しいけれど、それ以上に、心が満たされていて。








 二人はその後、初めて一緒に帰った。



 隣り合い、肩を並べてゆっくりと歩く。



 告白の後で、緊張してほとんどしゃべれなかったけど、二人で歩く帰り道は今までで一番の幸せだった。



 



 別れ際、



 ばいばいと手を振り、背を向けるリラに、グロルは思い切って声を張る。




「リラッ!!」



 ずっと呼びたくて、なかなか呼べなかった彼女の名前を。



 案の定、初めて名を呼ばれたリラは驚き振り返る。



「グロルさん、今...!!」



 そんな彼女に、グロルは笑みを浮かばせて言った。





「リラ。今日は、ありがとう。...また、明日」



「!!うんっ!また明日!!」







 二人はこの日、晴れて想いを通じ合わせた



 翌日シルベスターに全てを打ち明け、ここ数週間の事を謝ると、『やっと上手くいったのか!!ったく、バカが遅いんだよ!!』と全部知っていたようで、



 怒りながらも、心から応援してくれたのだった。