「...っす、好きな人がいるんだろう?」



「...え、」



 リラの瞳が揺れる。



 その反応を見て、グロルの中でそれが確信へと変わった。





「っ...大丈夫だ、きっと上手くいく。あ、あいつは良い奴だ、心配しなくていい」



「...?」



「...何を恐れてる、身分の差か?あいつは身分の差なんて気にするような奴じゃない!俺が保証する



 不安なのか?あいつは優しいし、人の事を思いやれるし、大切にしてくれる。それに...」





 どうにかして話をシルベスターの方向に持っていこうと、普段口数が少ないくせに必死になって言葉をまくしたてる。



 それに困惑しているリラは、言葉を遮るように声を張った。




「ちょ、ちょっと待って、グロルさん誰の話してるの?」



「え、...だって、ファーナーはシルベスターが好きなんだろう、だから」



「ええっ!!?」




 リラの素っ頓狂な声に、グロルは逆に目を丸くした。





「私が、シルベスターくんを、好きって?」



「...あ、ああ」



「はああ...なんだ、そういう事...」





 そう呟くと、へなへなと座り込むリラ。



 グロルは何のことか分からずに、座り込んだ彼女を見つめてオロオロとする。





「......ど、どうしたんだ一体」



「...っグロルさん!!貴方に言いたいことがあります!!」







 座り込んだリラは、キッと怒った様にグロルを見つめ返し、言うのだ。





「私は、貴方の言う通り、恋をしてます」



「......っ」



 あからさまに落ち込むグロル。



 そんな彼を置いて、リラは続ける。





「その人は強くて、優しくて、まっすぐで、」



 (...そうだ、それがシルベスターという人間だ)



「照れ屋で、不器用で、無愛想で」



 (そうそう...って、ん?)



「おまけに勝手に勘違いして、勝手に突っ走っちゃう。人の言葉も聞かないで」



 (...ん??)



「それに鈍感!周りの人の事に関しても、自分の事に関しても!!ここまでとは思わなかった!」






 明らかにシルベスターからかけ離れていく人物像。



 自分に向かって怒るリラ。



 何の事か未だ理解できないグロル。

 

 困惑顔の彼に



「まだ分かんない?」



 と、リラはとどめの一言を。






「もうっ、...でも、そんな不器用で鈍感な貴方が、私は大好きなの」




「......は...何、を」




「好きよ、グロルさん」




 これでも分かんない?




 固まるグロルに目の前で、



 リラは笑っていた。





 花のよう可愛らしい、



 グロルが求めた笑顔が、そこにはあった。