「...ちょっと行ってくる」



「って、ええ!!ちょっ、グロル待てって...!」




 シルベスターの止める声など聞こえないのか、グロルは二人の後を追った。



 残されたシルベスターはため息をつく。



「ったく鈍感め...アベルの邪魔しなきゃいいがなあ...」



 つくづくついていないアベルの事を想い、(...すまん!)と心の中で謝罪した。








 一方、リラの魔力の香りを辿って後を追ったグロルは二人の姿を見つけた。



 あまり人気のない学校の裏手。



 学校内で密かな告白スポットとなっていることなど、グロルが知る由もなく。



 リラに近づくアベルにグロルが(あいつッ...!)と突っ込もうとしたとき





「好きです」





 アベルがそう言った。



 グロルは思わず、立ち止まる。



 それは、正真正銘の告白。



 他人の告白を聞いてしまったという罪悪感から、グロルは急いで物陰に隠れた。






「試験試合の時、優しく俺の手当てしてくれた時に、好きに、なりました」



「...」



「リラさんの事が好きです。俺と、付き合ってください!!」



「......」




 リラは何も答えない。



 無言の時間が続く。



 そんな中、グロルはその場から動けずにいた。



 いや、動けない訳じゃない。



 すぐにその場を立ち去ろうとしたのだが、リラの答えが気になった。



 彼女は何と答えるのだろうか



 YES?



 それても、NO?



 当事者でもないのにグロルの心臓が、二人に聞こえるのではないかと言うほどドクドクと音を立てて鳴る。



 グロルはごくりと、息を呑んだ。

 
 





「......ごめんなさい」



 リラはそう言って、アベルに頭を下げた。







 それを聞いたグロルは、ほっと息をつく。



 しかし一方で、



(...ん?...何故、俺は、安心しているのだろうか...?)



 自分の心が分からずに困惑していた。



 



「...そっか、...」



「ごめんなさい、せっかく言ってくれたのに...」



「いや、いいんだ。振られることは分かってたから...」





(分かってたのに、なんで告白をしたんだろうか......)



 そんなことを考えつつ、そろそろシルベスターのところへ戻ろうとしていたグロルは、アベルの問いに再び愛を止めることになる。





「...好きな人が、いるんだろ?」



「えっ」





(...え...!?)