「......えっ...!」




 抱きしめられたリラは、グロルらしからぬその行動に顔を真っ赤に染める。



 けれど、その腕の中はとても、とても温かかった。



 その温かさを手放さなぬよう、リラはグロルの背中に腕を伸ばす。





 二人はしばらくそのままだった。





 しかし、



 ガララ―――



 扉が開く音でグロルは我に返る。



 そして、自分のとった行動を、知る。



「......はっ...!!!?こっこれはっ!!、ち、違うんだッ!!」



 突然慌て始めるグロル。




「ファーナーさん、点滴交換に来ましたー」



 ベット周りのカーテンの外で看護師の声が聞こえる。



 その声を聞いたグロルの慌てようと言ったら、おかしくなるほどだった。



「っ...また来る...!!」



 そう言い残したグロルは、呆然とするリラを残して、看護師の横すり抜けて病室を足早に出ていった。



「あら、お客様?私邪魔だったかしら」



 看護師は申し訳なさそうに、リラにそう尋ねる。



 リラはおかしそうに笑って



「ふふっ、ちょっとだけ。...でも、元気そうだったんで、良かったです」




 走り去っていってしまったグロルの事を想い、目を細めたのだった。