試験試合



 各クラスから選出された優秀者五人がそれぞれランダムに、二人一組のペアを作り、トーナメント戦で勝者を決する。





 軍の推薦もかかっている為、それぞれが持てる全てを出し切って本気で戦った。



 結果彼らは大きな怪我を負って医療チームに担ぎ込まれてくる。



 そんな怪我人たちの主な治療は他のメンバーに任せ、特に高度なものだけリラは手を貸しながら治療をしていく。





 グロルたちは順調に勝ち進んでいった。



 

 しかしリラの心は全く穏やかではない。



 医療チームは、試合が行われている闘技場からは少し離れた場所にある。



 その為試合の様子が分からない。



 だから、いつ二人が怪我をして運び込まれてくるかと、不安でソワソワとさせながら待つしかなかった。






 試合に負けて治療を受ける生徒の話を聞く限りではやはり、グロルとシルベスターは他の魔法使いたちを寄せ付けないほどに強いらしい。



 王国トップの特殊部隊とまではいかないものの、やはり力はある。センスもある。



 決勝戦はグロルとシルベスターの王族対決になるだろうというのが、もっぱらの噂のようだ。



 



 そして決勝戦



 予想の通り、勝ち残ったのはグロルとシルベスターだった。



「初めてだな、お前と戦うのは」



「......ああ」



「遠慮なんかするなよ。ここに立てば俺もお前もただの魔法使いだ」



「...分かってる...」



 王子だから手加減をしなければ、そんな考えを起こすものは少なくない。



 それもしょうがないと頭では認識している分、シルベスターはグロルにだけは手加減してほしくなかった。





 二人は向き合う。



 そして、開始のベルが鳴った。










 戦いは拮抗した。



 闇の魔力を持つグロルは属性の性質上シルベスターより優位に立っていたものの、



 シルベスターはグロルが放つ魔法の先を読む。



 彼の持つ風の魔力の応用



 風と心を通わせるシルベスターの特技を、最大限に活用したものだ。



 肉体戦は互角、勝負はどちらに転んでもおかしくない状況だった。