柔らかな風に花びらが舞う。





「一緒に食べてもいい?」




「ん?」

「え、」





 そんな中、小鳥の鳴くような明るい声が突如二人の間におとされた。







 見上げるそこには一人の学生服を着た女の子。



 クリーム色のふわふわな髪をサイドに結んだ彼女はにっこりと笑う。



 それはそれは可愛らしく、花の様に。






 彼女がリラ。



 これがリラとグロルの、最初の出会いだった。






 目を離せず固まるグロル



 対し、シルベスターはぱっと笑顔になる。



「ああリラ!!久し振りだなあ!いいよいいよ、座って」



 促されてシルベスターの隣に移動する最中、リラは自分を見つめるグロルに気付いた。



 そして彼女は席に着く前、深々と頭を下げる。



「お初にお目にかかりますフィンス卿。名も名乗らず失礼致しました。ご無礼お許しくださいませ」



「......あ、いや、そんな...固くならず」


「そうだぞリラ。俺達に敬語は無用だ!!」


「...!お前は」



「ふふっ相変わらず仲良いね」




 戸惑うグロルに、頭を上げた彼女は真っ白な歯を見せて笑った。






 ―――――






 改めてベンチに座った三人は、お互いの紹介を始めていた。



「彼女はリラ。グロルは知らないだろうが、光属性クラスの同級生だよ」



 魔法学校は自身の持つ魔力の種類によってクラスが分けられる。



 その分けられたクラスごとに、専門職の魔法を魔力の使い方から始まり、難易度の高い魔法まで数多く学ぶのだ。



 グロルは闇のクラス


 リラは光のクラス


 シルベスターは火のクラスだが風の魔力も扱う為、個別に風の魔法の授業も受けている。
 


 基本的に他のクラスとの関わりはほとんどない。



 そんな中リラとシルベスターがどうやって知り合ったかと言うと、王宮に併設された病棟、そこにシルベスターが訪れた時だった。



 医療系魔術の多い光属性のクラスでは、医療関係施設での研修が授業の一環として存在している。



 リラはその研修で、王宮の病棟に出向いていたのだ。



「リラはグロルと同じで頭がいいんだ。この前のテストもトップだったんだろう?」



「たまたまね。それにテストは良くても魔力が弱い私は実践には向いてないから」



 リラは医療系魔法に必要な繊細な技術は持っているのだが、いかんせん、体内に保有している魔力量が少なかった。



 医療現場に立てる最低限の魔力量にすら達していない。



 だから、戦場や病院で怪我人に分け与えるだけの十分な魔力を必要とする実践には立てない訳なのである。



 少しばかり落ち込んだようすのリラを見て、それまで無言を貫いていたグロルが口を開く。



「......だが、医療魔法の技術は我々には真似できないほど繊細な技だと聞く。テストでトップをとるだけでも相当なものではないのだろうか...」



 擁護するようなその言葉にリラもシルベスターも目を丸くする。



 それに気づいたグロルは、恥ずかしさからか顔をしかめて目を逸らした。



 その姿をみたリラは思わず微笑む。



「ふふっ、グロルさんってシルベスターくんが言ってた通りの人ね」



「だろぉ、俺の大親友だからな!!」



 彼女の笑顔があまりに可愛いものだから、



 グロルはまたしても目を奪われてしまった。


 



 向き合ったリラはふんわり笑う。花の様に。






「改めまして、私、リラ。リラ・ファーナー!
 これからよろしくお願いします、グロルさん!!」






 それからリラとグロルと、シルベスター三人の楽しい毎日が始まった。