『登場人物が個性的で、いい味出してますよね!』
『そ、そう…ですね』
とりあえず、彼の勢いに押されて同意の言葉しか出なかった。
『あの、お向かいの席いいですか!?』
『あっ、ハイ……』
正初対面の人だったのもあり、正直、こわかった。
見た目も、整った顔と高身長も相まってかなりの威圧感だった。
───けれども。
『おれ、その本すっごく好きなんです!』
『その作家さんの文庫本、コンプリートしてますから』
さらりとした栗毛に、黒ぶち眼鏡。
眼鏡の奥にはきれいな二重。すっと通った鼻。
一見すれば取っつきにくい印象の彼は、
恐ろしいほどに無邪気な笑顔を見せたのだ。
変な人……。
初対面の相手にこんな感想を抱くのは初めてだった。