「それ、特別にあげる」
時計を見てあと1分ほどでチャイムが鳴ることを確認した胡桃は、立ち上がりながらそんなことを言いだした。
「え?いらないよ」
「予備に取っておいたんだけど、私別に望月くん好きじゃないし。
親友だから特別に贈呈しちゃうっ!」
「だからいらないって!」
「じゃあ誰かに売ると良いよ。
それも1日で売れて、現在次号の写真を募集中だから。
多分1万円で売れるんじゃない?あはっ」
「あはっ、じゃないよ!ちょっ、胡桃ー!」
自分の席へ戻ってしまった…。
あたしは仕方なく、鞄にいれた。
1日で売れるほどの人気商品を、何だかどんな品であれ手放せないと思ったから。
「ふう」と溜息を漏らしながら、ぼんやりチャイムが鳴り入ってきた担任の話を聞いていると。
ブレザーの左ポケットに入れてあるスマホがマナーモードで震えた。
見ていると怒られてしまうので、こっそり机に隠して見る。
<望月桜太>
…は!?
何でホームルーム中に!?