「良いの?
望月くんファンいっぱいいるよ?」
「大丈夫大丈夫。
望月くん優しいから」
「ファンに睨まれたりしない?」
「平気平気ー」
怖気づくことなく向かって行く胡桃。
それに引っ張られるように、あたしは無理矢理望月桜太の前に立った。
「望月くんっ」
「どうかしたんですか?」
「アヤメがね、彼女さんの写メを見たいって」
「……良いですよ」
一瞬。
ほんの一瞬ニヤリと笑った望月桜太は、黒いケースのスマホを軽く操作し見せてくれた。
「うわぁ…美人っ!」
写っていたのは、望月桜太とツーショットの可愛い彼女。
ミルクチョコレート色のくるんっと巻かれた肩までの髪。
まるでモデルのような小さな顔。
そんな顔に似合う、それぞれの形の良いパーツ。
着ている服は乙女チックなピンクのワンピースで、
近所の遊園地の入り口にあるマスコットキャラクターの銅像の前で撮っている。