「……アヤメ、とですか?」
「ッ!ゲホッ、ゴホゴホッ」
呼び捨てっ!?
危うく飲んでいたオレンジジュースを吹き出しそうになり、あたしはむせた。
「そう。
アヤメも桜太って。
きゃっ、カレカノみたい」
1人で盛り上がるお姉ちゃん。
風太さんがその横で微笑ましそうにお姉ちゃんを見守っていた。
「…呼び捨てはやはり遠慮します。
僕には彼女がいますから」
「そうだよそうだよ!
男が呼び捨てにして良いのは、彼女だけだよ」
「アヤメさん、とお呼びしますね」
「……下の名前なの?」
「アヤメさんも僕のこと、気軽に呼んでくださいね」
「……じゃ、桜太くんで」
お姉ちゃんがあたしがどう呼ぶか知りたいようで、わくわくしている。
この期待に満ちた目を、妹のあたしは無視出来ない。
「改めてよろしくお願いします、アヤメさん」
「こちらこそよろしくね、桜太くん」
サッと手を差し出され握ると。
ギュウッと強く握られた。
痛い痛い痛いーッ!
ギブギブギブアープッ!!