あっ、と俺は思い出し

鞄の中に仕舞った四つ折りの紙を取り出した。

そして廊下に出て誰もいないことを確認し、胡桃さんに見せた。





「…何が言いたいんだろ」


「わかんね……」


「望月くんモテるからねぇ。
アヤメが彼女だってバレたら大変じゃない?」


「……大変か?」


「もしかしたら、いじめとか合うんじゃない?」


「……まさか」


「恋は盲目って言わない?
恋する乙女は、何するかわからないよぉ?」




胡桃さんの言葉には何だか現実味があって。

俺は無言で紙を四つ折りに畳み直し、鞄へ仕舞った。




「…アヤメを見ていてほしい」


「任せて!

でも本当は、彼氏である望月くんが見て守るべきなんだろうけどね」


「…俺は……」


「わかってるよ。
アヤメは望月くんを彼氏だって言いたくないみたいだからね。

親友には傷ついてほしくないから、私に任せて」


「……頼む」






女は男が守るべきであるはずなのに。

女に女を任せて良いのかよ。

1番大事な――カノジョを。





「……カノジョ……」





…果たして俺が

それを言っても良いのだろうか…?