「ありがとう。

私ずっと、お姉ちゃんのこと勘違いしてた。
最低な姉とばかり思ってた」


「…真幸は胡桃さんのこと、大好きだったのにな」


「お姉ちゃんてば、不器用なんだから」




クスクスと胡桃さんは笑う。

…もしかしたら、

胡桃さんが毎朝早く来ていたのも、

望月ファンブックとやらを作っていたのも

姉の彼氏であった俺を知るためだったのかもしれない。

俺が今まで“彼女がいる”とついてきた嘘を知っていたのは、胡桃さんだけだったから。





「胡桃さんて、結構頭良いよな」


「え?そう?」


「ああ」




胡桃さんは嬉しそうに微笑んでいた。

ゆっくり、今まで感じられなかったことを、感じて行けば良いと思う。





「私も望月くんが困っていたら助けるよ。
何せ親友の彼氏だもんね!」




俺は何も言わず、ただ微笑んだままだった。







…彼氏、か。

俺、アヤメの傍にいて良いのかな。

1度は俺のせいで記憶を失くしているわけだし。