「…大人の話し合いに、子どもが勝手に口出しするんじゃない」
お父さんが溜息をついたところで、エレベーターが到着する。
私は後を追いかけ、小学校卒業以来、初めてお母さんに会う。
「幸恵」
「あらあなた。来てくれたの?」
お父さんはズカズカ病室に入って行く。
私は入れず、入り口で扉を開けたまま立ち止まった。
「……胡桃」
「……!」
「入りなさい。
立っていたら変な人だろう」
私はゆっくり中に入り、扉を閉めた。
上体を起こしベッドに座るお母さんが、不思議そうに私を見つめた。
「……胡桃。久しぶりじゃない」
私は俯いていた顔をバッと上げた。
どうしてお母さん…私のこと。
覚えていて、くれたの?
何年も会っていないのに?