「…何でオレが頼んだって」


「消去法だよ。
お母さんか望月本人かお父さんしか考えられなくって」


「……ああそうだ。
オレはまだ、幸恵のことが好きだ」





じゃあ何で離婚なんて。

聞くことはなく、お父さんは話し始めた。





「離婚した原因はオレの浮気だった。
だけどいざ離婚した時、オレは幸恵を愛していたことを知った。

あの時決断をしたオレは本当に愚かだった。

真幸が死んで、幸恵が倒れたと聞いた時、出来るだけサポートしてあげたいと考えた」


「じゃあ、再婚すれば良いじゃないの」


「あの時離婚を言ったのはオレだ。
今更言えるか」


「…遅くないよ」




私は顔を上げた。




「私の友達は、諦めないで、記憶を失っても同じ人に恋をしたんだよ。
お父さんとお母さんは記憶を失っていないでしょ?

今からでもやり直せるよ」





いくら私が、望月の中には真幸がいるから、と説得してもアヤメは聞かなかった。

教室でも授業中でも、アヤメはずっと望月を気にしていた。




自分自身の意思を通したのだ。