気が付けば親友の名前を借り、話しかけていた。
河西彩愛の名前を聞き、首を傾げる望月桜太。
「どうして覚えていないの!」と叫びそうになるのを必死にこらえた。
大事な親友が、一途に恋していた相手。
嘘の名前を語ってまで、話したかった相手なのに。
どうして覚えていないの。
やりきれない気持ちを抱えたまま入学した先で。
私はかつての親友・河西彩愛と
“彼女がいる”望月桜太と同じ高校に出会った。
アヤメは私のことを一切覚えていなかったけど、
前みたいに話しかければ、気付けばアヤメの中でも私は親友と言う存在になっていた。
アヤメが忘れてしまった、かつての好きだった人。
彼女がいると評判だった。
彼女はきっと、白井真幸のこと。
死んだ相手を、今も想っている。
素晴らしいことだけど、ねえ。
あんたが真幸と話すきっかけになったのは、アヤメのお蔭なんだよ?
わかってあげてよ……ねえ。
私は望月桜太を監視するべく、ファンブックを作った。
バイトしなくてもお金は入ってくる。
お金なんて二の次だったけど、一石二鳥だった。