次に出会った時、アヤメは記憶を失っていた。
椿さんが申し訳なさそうに言う姿を見て、私は何も言えなかった。
『アヤメを、わたしが行っていた中学に行かせることにしたわ。
きっと記憶を失うほど、辛い出来事があったと思うの。
同じ学年の生徒が多く通う中学に、アヤメを行かせることはしたくないわ』
椿さんのように優しい姉がいたのなら。
私も少し変わっていたのかな。
羨ましさは生まれたけど、不思議と嫉妬心は生まれなかった。
椿さんが居たからこそ、アヤメがあんなに一途に人を想えるんだと、わかったから。
それから両親が離婚し、中学には新しく倉田胡桃で入学した。
そこでは多くの友達が出来たけど、1番の親友はアヤメ。
それは変わらなかった。
そして私はお父さんから知る。
真幸が事故に合い亡くなったことを。
お母さんがほんの少し精神を病み、入院したこと。
真幸に、彼氏が出来ていたこと。
興味なんてなかった。
双子とは言え、私たちは似ていなかった。
私の存在を無視し、優越感に浸っていたであろう姉に。
興味なんてこれっぽっちも湧かなかった。
ただ。
ほんの少しだけ、黒い気持ちが生まれた。