廊下は一斉に唖然となる。
1番唖然としているのは、目の前で起こった光景を理解出来ていない、あたしだ。
「あ…あの……」
パンパンと両手をはたいている男子生徒の背中に向かって声をかける。
「……何ですか?」
振り向いた男子は、にっこり笑った。
艶のあるサラサラな、自然に遊ばせている黒髪。
柔らかく細められた、二重の瞳。
きゅっと上がった、形の良い唇。
評判の高い制服を、適度に崩して着ている、しなやかな体躯。
容姿端麗――そんな言葉がお似合いの、イケメンだった。
「あの、ありがとうございました!」
90度近く頭を下げてお礼を言うと、「頭を上げて」と優しく言われた。
顔を上げると、まるで天使のような微笑みが広がっていた。
「お礼なんて言わなくて良いです。
僕も、あなたの行動に驚き、動かされたんだから」
「え?」
「言っていたでしょう?
女子に手を出す男子は許さないってね」
「あっ……」