「あ?何だてめぇ」
「あ、アヤメちゃん…」
「シズクちゃん、大丈夫だよ。
後はあたしに任せて」
女子――シズクちゃんはこくりと頷き、「ありがとう」と後ろにいた友達の元へ走って行った。
「……何だテメェは」
「あたしは河西彩愛。
女子の髪の毛を引っ張るなんて、許されないんだからね」
「は?てめぇに関係ねぇだろ」
「女子をいじめる男子は、ろくな大人になれないよ」
「何言ってんだ?…引っ込んでろ」
サッと拳を振り上げるリーダー的男子。
周りから悲鳴が上がる。
あたしはぎゅっと目を瞑った。
自慢じゃないけど運動は苦手だし、喧嘩なんて出来ないから!
だけど、放っておくことなんて出来ないよ…!
…いつまで経っても、拳はあたしに当たらない。
あたしは恐る恐る、目を開いた。
斜め前に、さっきまでいなかった男子が立っていた。
その男子が、不良男子の拳の行く手を阻んでいた。