「アヤメ。
胡桃さんに俺があの場所にいるって教えたか?」
「教えるわけないよ!
約束でしょ?」
「……じゃあ、どうして」
胡桃さんとは、何の関係も持っていないはずだが。
「……胡桃と、会ったことある?」
「毎日教室で顔合わせるだろ」
「そうじゃなくて。
もっと…前に、高校入る前」
ふと俺の脳内に、“河西彩愛”と名乗った奴が思い浮かぶ。
「……なぁアヤメ。
俺がクレープ屋に行ったこと、アヤメ知っているか?」
「クレープ屋?
桜太ってクレープ好きなの?」
“河西彩愛”は、アヤメじゃない。
「……アヤメ。俺実は――」
誰にも言うまいと思っていた出来事を、アヤメに話す。
俺のことを全て知っていると言った…“河西彩愛”のことを。