あの言葉がなければ。
きっと真幸と俺は付き合えなかった。
例え真幸が俺を本気で好きでなくとも。
俺は真幸を間違いなく、好きでいた。
「……はぁ」
夕焼け空に向かって溜息をつく。
オレンジ色の景色は、以前来ていた時と変わらないのに。
空の下にいる俺は、随分と変わってしまった。
「……な、ユキ」
上体を起こし、そっと問いかける。
「俺と一緒に、真幸の所行かねぇ?」
ユキは何も言わず、俺をジッと見上げた。
真幸に似た黒い瞳が、本当に愛おしい。
「……な、ユキ。
一緒に俺と、行かねぇ?」
これ以上、幸恵さんを騙せない。
幸恵さんの目に映っている景色を、俺は知らない。
演技をしてまで真幸と一緒にいたくない。
本当に、一緒にいたい。