『……お前は、誰だ?』
『……河西彩愛』
見知らぬ名前に、首を傾げる。
『かさい、あやめ?』
『ええ、それが私の名前。
覚えておくと良いわ』
踵を返し、“河西彩愛”は行ってしまった。
それから数ヶ月後。
俺は高校に入学し、いつも通り演技をした。
誰からも必要とされる、彼女がいる人気男子。
『ねぇねぇ、もっともっと騙しちゃいなよ』
かつて言われた真幸の言葉を思い出し、俺は多くの奴らを騙した。
『胡桃って言います。
望月くんのファンブック作っちゃった!』
変な女に付きまとわれても。
笑顔で、内心で気持ちを爆発させていた。
『良いですけど…僕、彼女いますから。
覚えておいてくださいね』
『ありがとう望月くん!!』
……ファンブックって本当何?
今でもそれは、わからない。