「名前は知らないけど…多分そうだと思う。
それで…その幸恵さん、あの……」
上手く言えない。
だけどあの口振りは…可笑しい。
「上手く言えないんですけど…。
真幸さんが、今でも生きているような言い方で…」
『いつでも会いに来てやってちょうだいね』
幸恵さんは、桜太に言っていた。
会いに来てやって。
……亡くなってしまった人に、どうやって…。
「…白井という名字は、幸恵さんの名字でね。
真幸ちゃんが生まれてすぐに離婚して、女手一つで真幸ちゃんを育てたんだ。
たった1人の娘さんを失った哀しみは、僕たちじゃ計り知れないよ」
……そうだろうな。
ずっと成長が見られると信じていただろうに。
「真幸ちゃんが突然亡くなって…。
幸恵さんは今でも、その真実を受け止められないでいる」
「…………」
「それは……桜太も同じ。
だけど桜太は少しずつ、受け入れている。
まだ完全じゃないけどね」
望月桜太には、彼女がいる。
誰もが知ることだ。