お願い。
嘘だと言って。
風太さんの後を追いながら密かに願う。
「……入ろうか、アヤメちゃん」
嘘だと言ってよ、ねぇ。
桜太、どうして嘘ついたの。
真幸さん、どうして。
「突然だったんだ。
誰にも、桜太にも、阻止出来なかった」
どうして。
どうしてそんなに残酷なの。
まだあたしたち、高校生だよ。未成年だよ。
大人じゃないんだよ。
まだ保護者が必要な時期なんだよ。
「……久しぶり、真幸ちゃん」
風太さんがしゃがみ込み、手を合わせた。
あたしはその近くで、佇むことしか出来なかった。
「……アヤメちゃん」
風太さんは立ち上がり、哀しく微笑んだ。