「ありがとうね。
ユキは真幸が大事にしている猫なの」


「いえっ……!
そ、それじゃあたしはこれで!」


「もし良かったら今度、またユキに会いに来てちょうだいね」


「あっありがとうございます!」


「桜太くんも。
桜太くんと一緒にいる真幸は本当に嬉しそうなの」


「…俺も、嬉しいです。
真幸は俺の、大事な人ですから」


「また来てちょうだいね」


「……ありがとうございます」


「それじゃユキ、行くわよ」




ぎこちなくお辞儀をする桜太に気が付かないのか、

真幸さんのお母さんはユキくんに声をかけた。

だけどユキくんは桜太にくっついたまま、動こうとしない。




「ふふっ、真幸じゃないと駄目かしら」


「…ユキは、僕が預かりますよ」


「え?でも真幸が……」


「兄がユキを気に入り、会いたがっているのです。
必ず明日、ユキを連れてきます」


「……お兄さんが気に入ったのね。
わかったわ、明日よろしくお願いするわね」


「それじゃ…失礼します」





桜太が顔を伏せたまま入り口へ向かう。

ユキがその後を追いかけて行ったので、あたしもお辞儀をして出て行った。